伝統の「さつまいも産地」
四代目の継承と挑戦
まるきん伊藤農園
伊藤 元貴さん
豊橋市飯村北
インスタグラムといったSNSも始め、栽培風景や情報を発信している。
12月から3月まで大根の栽培・販売もしている。
インスタグラム＠marukin_motoki
HP：https://marukin1211.base.shop
受け継がれた技術を守りながらも、大きさなど時代に沿ったニーズも把握するなど、将来を見据えた伊藤さんに話を聞いた。
豊橋市の東部に位置する飯村（いむれ）地区。この地域は小石まじりの粘土質の土でさつまいも栽培に適しており、古くからさつまいも「飯村の甘藷（かんしょ）」の産地として知られている。そんな飯村地区で80年以上続くさつまいも農家と造園業を営むのが、まるきん伊藤農園。四代目となるのが、庭師でもある伊藤元貴さん。地元の高校を卒業後、製造業の会社に就職し、庭師だった叔父が倒れたことをきっかけに、会社員を辞め9年前に家業へ。現在、さつまいもの圃場は飯村地区のほか、伊古部地区・富士見地区、大岩地区など約2町の面積を手掛け、収穫量は約60ｔに及ぶ。
「飯村はさつまいもで知られているが、実際はこの地区全体の畑や農家も減ってしまっている。その中でも長年の技術を守り、親子三代それぞれが役割分担をし力を合わせてがんばっている」と伊藤さん。
さつまいも栽培のスタートは苗作りから。2月から菌に強いポット苗をハウス内で芽出し、その後マルチを張った圃場に植付けしていく。
収穫は7月中旬から11月下旬までで、この期間は掘りたてのさつまいもを出荷。12月頃からは、伊藤農園の特徴である稲わらを使った“稲わら熟成いも”の出荷となる。この稲わらのための米作りも平行し稲刈り後約3週間、天日干しし、自然乾燥を行う。お米は自家用、稲わらはハウスの中に敷き、収穫したさつまいもを積み、またその上に稲わらをのせて寒さや温度を調整して熟成させる。「品種は紅はるかで、圃場から運ばれたさつまいもは、祖母が手作業で茎から外しています。出荷前にさつまいもはやさしく機械で洗い、天日干しします。乾燥を終えると母が袋詰めして出荷となります」と全てにおいて手間を惜しまない。
熟成のハウスでは、その時の状態に合わせ、布団のように稲わらの段数を増やしたり状態を見ながら翌年2月頃まで管理。有機肥料と稲わらを使用したこだわりの土づくりや栽培だけでなく、収穫後も経験や技術、人間の勘も必要で、すべてが揃っておいしいさつまいもとなる。「マルチの間の草取りも母と祖母が手で採っている。昔と比べて機械を導入しても、現在も手作業が多い」と、さつまいもの表面なきれいな色・肌つやからも丁寧さと愛情が伝わってくる。四代目としてネット販売を開始し新たな流通や販売も模索中だそう。イベント出店など繋がりを通じて、多くの人に味わってほしいと語る。
冬の間は大根も栽培。品種を使い分けて「きれいな大根を作ること」をモットーに、産直などでも人気となっている。
【編集】「この仕事が楽しくて仕方がない」と話す、おばあさんの言葉にじんわりきました。
