偶然に訪れた地で道が開け、現在は16反程の面積のれんこんを栽培。秋の台風で葉が取れたり、花が咲かなかった被害はあったものの、今年も本格的に収穫が始まった。今年で3年目となるれんこん栽培について加藤さんに話を聞いた。
■株式会社加藤土木解体
加藤 高志さん
建築関係の専門学校卒業後、サラリーマンを経て家業を継ぎ二代目。自宅では烏骨鶏やヤギを飼育。また近年、猪の獣害も多くみられることから猟銃の免許も取得するなど、田原が好きだからこそ様々なチャレンジをしている。
渥美半島は太平洋と三河湾に囲まれ、中心には山々が連なり、豊川用水により水系が確保され、温暖な気候を活かした日本を代表する農業産地の一つ。しかし近年では、燃料の高騰の影響でハウス栽培が減少、そして水田までも放棄地が目立つようになってきた。この現状を何とかしたいと立ち上がったのが、株式会社加藤土木解体の加藤高志さん。
加藤さんは、生まれも育ちも田原。愛するこの渥美半島で、放棄地を利用し新たなことができないかと探し続けていた。偶然に訪れた愛知県愛西市のれんこん畑を見て、「これだ!田原でもできるかもしれない」と思ったそう。新規で稲作は将来的にも難しいが、れんこんなら水田が再利用でき、解体業の重機が利用できることで光が見えた。何より、加藤さんがれんこんが好きで、縁起のよい食材だったことで、より一層熱意が高まり、今年でれんこん栽培3年を迎えた。
早速、加藤さんは全国有数のれんこん産地である愛西市に技術を学びに行くこととなる。その後、半島内で使われていない水田を探しあて、栽培を始めた。進めていく中で、海辺に近い水田は砂地であったり、山間地の水田は粘土質であったり、場所によって土壌に大きな差があることも分かった。試行錯誤をしながら、砂地の水田は鍬や手で堀る「くわ堀り」、粘土質の水田では「水堀り」と呼ばれるホースから勢いよく出る水を利用し堀り出す方法を採用するなど、その土地にあった畑づくりから栽培や収穫方法を選んだ。5月から6月にかけて種れんこんの植え付けをし、11月頃から1月下旬頃まで収穫は続く。
始めた当初から、病気になりにくく、浅くても大丈夫な品種を選んだ。今後も収量や土地に合ったものをこれからも探していきたいそう。
「地産地消は地元へ恩返しというか、新しい産業としてチャンスがあると思う。現在は従業員や研修生も加わり栽培をしている。自分自身は農業の経験はないが、本業を活かすことができたり、父が農業をしていたことで農機具があったことでも道が開けた。栽培したい人が集まり、まとまれば大きな渥美半島の新しい産物になるかも…」と加藤さんんの夢は広がる。再利用することで水田は荒れず、収量が取れれば相場も安定するため、地域に根付いていく可能性はは無限大、まだまだこれから。「地元のパン屋さんとコラボしてバーガーも販売。将来的には乾燥野菜も着手していきたい。大人も子どもも、れんこんは好きだからね」と加藤さんの笑顔からは、れんこんの美味しさと魅力が伝わってくる。
【編集】水深が深い…と思いきや、立膝でホースを自由自在に作業していると思いませんでした。私もれんこん大好き。