今年は異例の台風で被害を受けながらも、品種の切り替えや栽培量などでカバーできた栽培計画。随所にみられる「工夫やアイデア」と「味」でファンを魅了する朝倉さんに話を聞いた。
■あさくらファーム
朝倉 孝樹さん
梨、イチジク、シャインマスカットなど広大な果樹畑を手掛ける。「野菜ソムリエがいる農園あさくらファーム」と名付け、資格取得時に習った売り場や販促色についても実践。さまざまな工夫も取り入れ、販売促進にも力を入れる。
豊橋市の南側に位置する小島町。小島町周辺で栽培されている「小島梨」はブランド梨として知られる。その「小島梨」の生産者の一人、あさくらファームの朝倉孝樹さん。また、同時期にイチジクの栽培も手掛ける。。あさくらファームと言えばこの2枚看板で初夏から晩秋まで出荷が続く。
朝倉さんは大学卒業後、建築士の道へ進むも、祖父から始まった農家を継いで11年。しかし最初は農業の右左も分からず、土壌に必要な「窒素、リン酸、カリウム」から調べて勉強したそう。この小島町はもともとやせた土地。やせた土は肥料調整がしやすいため、各要素を、与える量や時期などを根から葉に栄養の渡る日数まで逆算して調整、毎年違うことをして実行した。他にも、米ぬかやもみ殻、わらを使い、微生物やミネラルといった細かな調整も、この土地だからできることの1つ。梨もイチジクも基本はここにある。
三代目として取り組んだことは、梨の品種を増やしたこと。インターネットで新しい品種を調べて導入し、当初あった樹の半分は植え替えを行った。7月中旬から10月下旬まで、約15品種が時期をずらして楽しめるのが、あさくらファームの強み。幸水、豊水、あきづきといった一般的に知られている梨に加え、極甘な秋麗、凜夏、あきあかりなどの最新品種や、長十郎や菊水といった昔からある品種まで、お客さんの好みに応えられるよう毎年情報収集やニーズ調査をかかさないと話す。
一方、イチジクは、甘く大玉の桝井ドーフィンを栽培。エンドウ、ネットメロンを作っていたハウスを活かし、もみ殻や炭を使った土壌はふかふかと柔らかく養分を吸いやすい。また光を十分に当て、赤くなってから収穫するなど、朝倉さんの配慮が光る。
「その土地に住み、住んでいる所の物が体に合う気がする。旬の時期に体が欲すると思うため、地産地消は大切」と語る。多くの人に食べてもらうためにも、こだわりではなく「探究」し続けていかなければと朝倉さん。今後は、六次産業化にも挑戦していく予定。ジャムやドライフルーツ、コンポートなどにすることで、より幅の広がった提案ができるため。また、今年から地元のケーキ屋とのコラボも実現した。
「海に近いため、潮風によってミネラルが運ばれ、甘い梨やイチジクができる土地。自然の力と自分たちの技術でおいしさを届けたい」と、両親と共に力を合わせて手掛けた圃場からは、まるで森の中にいるようなエネルギーを感じた。
【編集】覚えられないくらいの梨の品種に驚きでした。イチジクはとろっとして、イチジク好きにはたまりません!