2013年6月 旬のしずく~地産地消推進隊~

syun_topbar県内外から来園者や就農修行希望者が絶えることがない

ここ知らずして農は語れず 農の楽園「福津農園」

1306shun_hito福津農園
松沢 政満さん

愛知県新城市中宇利福津38
豊橋有機農業の会 会長

みつばちが飛び交い、小鳥のさえずりが響き、時が経つのも忘れさせてくれる有機農業の里・福津農園。新城市福津の傾斜地で資源利用循環型農業を営み、住居も構えている。計算しつくされた農園内は野菜畑、果樹園、鶏舎、水田があり、この土地の力や自然を知り尽くしたからこそ実る販売品目は通算200を超える。代表も務める「豊橋有機農業の会」の毎週開催される朝市ではお客さんを飽きさせない、そして楽しませる品目を揃える。


静岡大学では応用微生物学を学び、就職。大学で農業を勉強しなかったのがいい方向へ導いたのか、当時の日本の農業に危険を感じて29年前に脱サラ。地球が生まれ、微生物や生き物たちがバランスをとり地球を作り、一番最後に生まれた人間が壊そうとしている。壊さない生き方、資源を無駄に使わない生活が必要と感じたそう。有機農業の技術で1.5haある福津農園を管理する松沢さんに聞いた。

バイオマスの存在

福津農園で大切にしているのが「資源循環」。中でもわらや竹や木、草の生物資源「バイオマス」を重要視する。多様な生物と共存するためのトラ刈りの農道にも生命力を感じる。刈り取られた草も鶏のエサや畑の微生物、虫たちの必需品として、害虫や病気に強い農産物を作るのに活用する。 やぎが草を食べ、糞が肥料として土にかえる、ヤギの乳で人が恩恵をうける。人はこの大きなバイオマス循環環境を守ることで多様な生態系の一部となる。全体を知ったときにそれぞれの場に意味があることが理解できる。それが福津農園なのだ。「日本は草がたくさん生える風土。バイオマスの生産量はイギリスの10倍。一農家当りヨーロッパの1/10の耕作面積の日本農家はバイオマスをうまく使えば世界に伍していける。」と松沢さんは力強く話す。

福津農園-水田準備福津農園-道福津農園-恵み梅津農園-自宅福津農園-雑草説明福津農園-餌

福津農園の有機農業

「現世代の生産条件より、将来世代の生存条件の確保持続の選択という有機農業の初心。農業の既成概念にとらわれない…」理念を貫いたことで、根付け、若い世代にも認められたと松沢さん。有機のすごい所は「草で土を耕し肥やすこと」。肥料は使わず、生えてきた草を抜かず利用し野菜をうまく育てるのが福津農法。遠目からは一見、何が植わっているのかの判別できない畑…そんな畑では、キャベツの間に生える雑草や虫の種類を教わる。長く伸びる草を栽培に利用したり、必要最小限だけ刈った草を野菜の根元に置き湿気や温度を保つことで、みみずが住み良い土壌にかえるなど、松沢さんならではの農への取組みが随所に散りばめられている。こんな積み重ねが環境把握と保全と創造を可能にしている。通年に渡り、畑で野菜が育ち、傾斜地では季節の果実と野菜が収穫できる。水源となる池、気配りされた農園、そして大いなる自然の恵みが加わり、松沢さんの理想とした農の楽園が形成されている。
福津農園-風景福津農園-有機キャベツ福津農園-果樹畑

地産地消への思い

福津農園-松沢氏福津農園-有機農法01福津農園-豊かな水源
「小さい循環農業を目指している。生命地域は一級河川の流域の範囲。水、食べ物、エネルギー、農業資材、建築用材、コミュニティーにいたるまでその範囲で成り立つのが理想。」と話す。いろいろな農産物を少しずつ作り、あるものを最大限に活かしながら消費者のニーズに応えている。「世代としてできること…ただ有機農業だけでなく、負の遺産を残さない暮らしを実証しながら伝えていきたい。都会から里や山へと生活圏が移れば日本の農業、延いて暮らしも変わるはず。まずは小さなモデルの農と里を作りたい。」と農業へ熱い思いを語ってくれた。

【編集】微生物、風、草などそれぞれに全てに意味があることに感動。肌で感じられたことに感謝です。

 

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