2014年3月 地のしずく~地産地消応援隊~

季節誌しずく-地のしずく豊橋「給食」

県や市の職員、栄養士、生産農家など様々な人の手によって支えられる食育の中でも重要度の高い「給食」は今も昔も子どもたちの毎日の楽しみのひとつ。平成25年度、豊橋市の学校給食は小学校52校・23,019食、中学校22校・12,209食、合計74校・35,228食を共同調理場で作られる。子どもたちの期待の献立のおかずは4つの調理場で作られ、パンやごはん、牛乳は業者が直接配送。その一角を担う豊橋市南部学校給食共同調理場でお話を聞いた。

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給食の今を知る

豊橋市内公立小・中学校における給食を通じ、児童生徒の食育を推進し健全な心身の発達と豊かな食生活を守るため、安全・安心な食材料を調達、学校給食共同調理場における受託業務を行っているのが公益財団法人豊橋市学校給食協会。県職員の12名の栄養士が市内統一献立の必要食材、産地、数量など落とし込み、献立を作成している。前年にほぼ90%の献立素案が作られるものの不作や台風などの影響による産地変更など、状況を見ながら年、半年、月単位で微調整を行い、常に管理されている。

給食の現場 食材と農業

その日に同じ規格の物を決められた量、集めるのは大変なこと。決まった時間内に仕上げる責任もあり、規格を揃えることで加工に時間をかけず時短を計るという。食材調達と時間、予算など制約が多い中、バランスを取りながらというのが現実。またその一方、農産物との関わりを知る一環として使用する農産物の生産者が年に1度、1校の学校への足を運び、直接子どもたちと交流をしている。授業として取り入れられている学校もあり、まず農産物を知り、栽培される過程を知ってもらうことでより身近に感じてもらうことができるという。

6次産業への期待

地元農産物を使用した特長ある献立を実施し、地産地消を推進する「とよはし産学校給食の日」。それ以外の時期でも地元の加工した食材を味わうことができたらと地元特産物の6次産業化への期待も強い。通年性をもった加工品としての安定供給、食べやすさ、栄養価向上など、食材によっては新たな献立が生まれる利点もある。現在もピューレやペーストにするなど使いやすい工夫などを加工業者と協力して推し進めていく取り組みや動きもあり、地元特産物の6次産業化への期待の高さをうかがわせた。

栄養士からみた学校給食

主食+副食+牛乳が基本の『完全給食』。近年の人気献立はマーボー豆腐、現在はごはん食が増え回数の減ったパン。時代の移り変わりもあるが、昔と変わらず栄養面や食材を総合的に組合せ、献立作りをしている。子どもたちの笑顔のためにと日々、給食と向き合う栄養士の桑名さん、山口さん、谷中さん(取材時不在)。年間を通じ、給食との距離を近づけるため、近隣の学校に出向き栄養教室や給食指導で食の大切さを伝える一方、子どもたちの声を直接聞くこと、アンケートなどを通して次に繋げている。「新献立の時、反響はドキドキなんです。」と山口さん。小・中学生はまだまだ食域は狭い、懐かしい手のこんだ郷土料理を取り入れるなど、家庭では馴染みのない献立を取り入れることで、少しでも家庭の見本になれたらと力が入る。「カレーライスだけでなくサラダもつけよう」など、自ら食に興味を持ち、家庭で実践してもらえることを願う。そんな栄養士や調理される方々の尽力の甲斐もあり残食は全体的に減っている。学校生活で楽しみな時間であり、食育という観点からみても重要な給食。栄養士としての仕事に終着点はない。

給食からみた地産地消

食育と地産地消は密接な関係があり必要。給食を通じて自分の生まれ生活する東三河の産業を知ることができ、同時に地域への愛着も生まれる。そんな狙いもあり年間6回、献立に「とよはし産学校給食の日」を設けている。旬の時期に利用される提供農産物とその数量は『ミニトマト約85,000個』、フルーツミックスとして利用される『すいか292玉』、日本一の品質を誇る「琉球種」を使用した『とうがん約1,000個』はカレースープとして。そのままで提供される柿は豊橋を代表する『次郎柿約4,500個』。炒めそば、添えキャベツなどに『キャベツ約8,000玉』。お米「あいちのかおり」においては年間330t、お茶碗約500万杯分の白米が使われている。また、小・中学生と保護者が食や地元農業への関心を高められるように『学校給食アイデア料理コンテスト』を開催するなど繋がりを深める活動も。「小さい頃の味覚はとても大切な時期。豊かな食生活にも繋がるように、給食としても地元の食材を安心・新鮮に提供したい。」と桑名さん。そんな思いはあるが、量・品質が揃わない、夏休み中に旬の時期が重なるなど課題も多いようだ。

食材に対する思い

栄養士が中心となり献立が決まり、それを元に市教育委員会から購入食材依頼がされる。入札などを行い野菜や揚物等の食材を一手に購入するのが公益財団法人豊橋市学校給食協会。お米と牛乳は愛知県が一括で購入され、各市の指定業者が納入。その他の食材を手配するのが学校給食協会。基本的に地産地消を目指し可能な限り市内産、次に県内産と範囲を広げるという。卵、うずら卵は市内産を中心に、牛肉は愛知産。豊橋市内約35,000食分、指定の大きさなど規格に沿った物と量を調達する必要がある。そのため、時期はもちろん、献立のことから調理場や時間を含め年間トータルで考えなければならない。天候不順で入荷計画が大きくずれることもあり、仕入業者から情報収集をしながら安定供給に常に気を払う。調達業務の他に、先記の農家さんを招いて小学3~5年生を対象にした出前授業の手配から準備などを行っている。農家さんが直接学校へ出向き、どうやって作られているのか、苦労していることなど、直接会話をしている。子どもたちのために今後も安心で安全な食材の安定供給を目指すと中山さんは笑顔で話した。

 


 

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栄養士
栄養士  山口育代さん(右)
栄養士  桑名清子さん(左)

豊橋市橋良町

調理が民間委託になり、不安もあったが調理場サイドからにんじんの「花形切り」のアイデアが出るなど、毎日子どもたちが楽しみしている給食を喜んでもらえるようにと給食共同調理場一丸となり業務にあたっている

nakayama公益財団法人 豊橋市学校給食協会
事務局次長  中山宏孝さん

豊橋市橋良町

豊橋市教育委員会から依頼があった食材を年間を通じ市場動向など、仕入業者から情報収集しながら一手に市内学校給食の食材購入業務を行っている

 


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