農業から知る「地域の四季」と
「人生の楽しみ方」
豊橋市内の中でもお米の産地である野依町。近年の異常気象のある中、四季を大切にし稲作と畑の両立を楽しみながら作業にあたる山口さんにお聞きした。
子どもの時からお米の栽培を中心に生活をしていたことから、現在も主は田んぼ。近隣では高齢化が進み、年々手掛ける面積は増えている。伝統あるこの地域の稲作を守りつつ、自分たちだからできる農業の形を楽しむ毎日を過ごす。
水田が一面に広がる、豊橋市南部に位置する野依町。野依町や隣の植田町は、古くから稲作が盛んで、豊橋市内でも良質な米の産地の一つとして知られている。
山口さんは米農家の三女として生まれ、代々受け継がれている米農家を継いだ十四代目。祖父母、主となってやっていた母親から技術を学び、5月初旬の田植えや9月の稲刈りは夫婦で行い、力を合わせて守り続けている。普段の草刈りや肥撒きなどは山口さん一人で主に管理している面積は約二千坪。田んぼがあるおかげで四季を感じられることから、1年のメリハリが身体に沁みついて心地良く感じているそう。
品種は「あいちこしひかり」。「毎年同じように作業していても同じようにできないのが農業ね」と微笑む山口さん。受け継ぐ技術や毎年の努力と愛情、そして元々ある土地の力によって、毎年自慢のお米を作り出す。
本格的な野菜の出荷は昨年から。定年退職したご主人が愛知県立農業大学校に研修へ行き、持っていた土地を利用し畑を広げて始めた。
「元々大学は農学部。サラリーマンを経て、興味のあった農業の世界へ。農業大学校で仲間もできたことから刺激となり、私は手伝うくらいかしら」と、夫婦で話しながら、作ってみたい野菜に挑戦している。 近くに「花ノ木」という町名があることから「花ノ木ファーム」と名付け、レシピやシールなどを作り販売促進にも力を入れているそう。
珍しいアーティチョークやローゼルなどはじめ、これからの季節はじゃがいも、オクラ、バターナッツと呼ばれるかぼちゃ、いちじくなど年間約15種類を手掛けている。また、販売はしていないが、トマトやなすのジャム、米ぬかを使ったふりかけやクッキーなど手作りが趣味で、農家だからこそできる挑戦も楽しむ。
「地産地消は四季が感じられるから大切と思う。今年はたけのこを朝堀りして出荷したり、季節ごとに採れる物を生活に活かすことができるから」と夫婦で畑を眺める。
お米のこだわりは、選りすぐった一等米を出荷すること。お米ができるまで6~7ヵ月かかるが、決まったことを当たり前に行い、大地の力を信じて今年も9月の稲刈りを待つ。「今後は、受け継いだお米を作り続け、畑もいろいろな野菜を試しながら、自分たちも楽しみながら作っていきたい。野菜の販売も消費者の立場に立ち、大根も小世帯用に半分にしたり、シールを貼って分かりやすくするなど、ニーズに合った形態を工夫しながら二人で考えるもの楽しい」と山口さん。「楽しんでやる」ことが何よりも大切で、お米や野菜にも愛情として伝わっていく。
【編集】無理せずに穏やかに年を重ねて過ごしているご夫婦の農業の形が、とても新鮮でした。