栽培を始めて約1年。農薬を使わず、試行錯誤を繰り返し有機肥料で育てた田原産バナナ。それぞれの得意分野を活かしつつ手を取り合った農家の「福井さん」、流通・統括管理の「沼尻さん」、設備の「後藤さん」に、田原産バナナのこれからについて話を聞いた。
■株式会社三喜 サン・メリーファーム
福井 武悦さん・沼尻 佳代子さん
後藤 浩之さん・福井 輝悦さん
社長の福井武悦さん(株式会社マルフク)はチンゲンサイや大根、えごまなどを栽培する農業歴50年。プロの生産者とチーム連携を組み、「栽培」「管理」「流通」の安定した流れを作る沼尻佳代子さん(アグリフューチャー株式会社)、機械設備などを専門とする後藤浩之さん(株式会社快)、福井輝悦さん(Web通販等)が手を取り合い会社を立ち上げた。
現在、日本で主に食べられているバナナは、ベルト地帯に当たるフィリピン、エクアドル、台湾から輸入され、全体の約8割。その中、海外では農薬問題や、バナナの病気が蔓延し質の良いバナナが減ってきている。
顔見知りの4人が、なにげなく話した話題がバナナだった。そこから話が盛り上がり、「果物の中で1番消費されるのがバナナ」であることや、果物離れはしても、バナナは手軽に朝食で食べれるなど、老若男女問わず人気があることに気づく。「田原で安心して食べられる国産バナナ作ってみたい。バナナで挑戦してみよう」と4人が手を取り合うきっかけが生まれた。
そして、個々で動くより会社を作ろうと、サン・メリーファーム(株式会社三喜)を2018年2月に設立した。
ただ、課題は多かった。田原の気候は暖かい地域とはいえバナナを栽培するには気温が低い。バナナの生産地は熱帯、亜熱帯地域に分布しており、「バナナベルト地帯」と呼ばれる、赤道をはさんで南緯30°から北緯30°の間で栽培され、勿論、日本はこのバナナベルト地帯には入っていないため、日本での栽培情報は乏しかった。しかし、国内でごくわずかに栽培されている生産者を探して訪ねたり、海外視察で栽培に関する情報を収集した。
そして、バナナの苗も国内での入手は難しく、沼尻さんの知り合いを伝い、産地の一つである台湾から、60年前、日本に輸入されていた、モッチリとした品種の「北蕉(ほくしょう)」を、手に入れる事ができた。いよいよ栽培の準備が整い、期待はさらに高まっていった。
後藤さんの手により、ハウスの設備が整い、福井さんの農業技術と経験で栽培が始まった。問題であった温度は、暖房を利用して調節と管理を徹した。初めてで分からないことだらけで、試しながらの毎日だったが、バナナの成長の早さに度肝を抜かれたことや、定植が1日ずれれば1週間以上の違いが生まれるなどとても繊細であること、生命力の強さなど驚くことばかりだったそう。こうした中、本来11~14ヵ月かかる栽培期間を約8~10ヵ月で実らせることができた。そして誕生した田原産バナナは太陽のような力をもった存在になって欲しいと「さんさん太郎」と名付けられた。今後は、食育活動としての観光農園やバラつきのないブランド品質構築のため、※信頼できる仲間と共に、国産バナナの更なる大きな風を巻き起こす。
【編集】雑味のないきめ細やかな自然の甘みが口いっぱいに広がりました。