2014年12月 旬のしずく~地産地消推進隊~

syun_topbar大立の灯は消さない故郷の味覚を伝えて故郷の味覚を伝えて

久野愛子さん
伊藤 武治・徳子さん

愛知県北設楽郡豊根村

愛知県東三河北部(奥三河)に位置し、すぐ隣は長野県と静岡県が境になる豊根村が久野愛子さんのふるさと。今は愛子さんの両親2人が豊根村に暮し、久野さんは豊橋から通いながら農業と向き合う。

 


自然豊かな豊根村には、受け継がれ続けたこの土地ならではの農作物の栽培技術や知恵がたくさん。過疎化や獣害の問題もあるが、守り抜く伝統やこの土地から始める新たなことも、その技術や知恵が必要不可欠。両親の姿を見て、私にできることは…と立ち上がった、久野さんに話を聞いた。

百姓の原則は畑を耕せ

豊根村の中でも山深い古真立地区にある久野さんの実家。ダム建設で残された小さな集落で暮らす愛子さんの両親は、受け継がれた母屋の前に広がる畑と茶畑で、極少規模の農業を続けている。もともと豊根村生まれ育ちの武治さんは長年、林業をしていたこともあり、受け継いだ知識や技術に加え、風土、土や気候、獣のこと、野菜などの生育の相性などに詳しい。「作物栽培は適地適作。土地に合った作れるものを作り、作れる時期に作ることが大切。」と強く語る。その基本となる土壌作りに力を入れ、土地の性質と経験で作物に合った土壌を作り出す。徳子さんは、種蒔きの時期や移植のタイミングが全て頭に入っており、必要な時にはビニール掛けをするなど、早目に細かく調整する。「土がいいと良い作物ができる。おいしいが一番うれしいね」と徳子さん。

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守られ、育まれながら

伊藤さんの手がける野菜は、子どもの腕程に育つ長なす、八つ頭、蒟蒻芋、茗荷、エゴマ等、古くからこの地で伝わるものが主だが、最近では伊勢芋が土に合うことが分かってきた。ところが、今年4月のこと、徳子さんが階段から転落し入院。春の農繁期が重なり、困惑する武治さんを、愛子さんと知人達が豊橋から支え、何とか乗り切ることができた。愛子さんは畑のことは何も知らなかったが、入院中の徳子さんから野菜の成長管理などの手ほどきを受け、父の思いや体調を見ながら過ごした。その3ヶ月間は忘れ難い日々になり、畑の事はもちろん、「人の繋がりや自然の力についても深く考える時間になった。来年は志気を高めて、人も畑も元気にします」と愛子さんは話す。武治さんが「農作物は子供と同じ。目が離せない。」の言葉の意味を知り、この地で生きることやその意味を守ってくれていた事に感謝し、今後は地産地消のサイクルを目指し、発信する気持ちを強くした。

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大立そばプロジェクト

そんな中、兼ねてから愛子さんを通じて豊根村を訪れていた知人達の中で、特にそば好きの集団が大きく動き始めた。気心の知れた仲間が交代で現地に通い、休耕田で「そばプロジェクト」を立ち上げた。見よう見真似で始めたそば栽培。あと2週間で収穫という時、山村の現実を見ることになる。なんと1反分全て鹿に食べられてしまった。しかし、メンバー達は、「自然との共生を学んだ。すぐに来期に向けての準備をして、次世代にも伝えていきたい」と、前向きな熱い思いを抱え、夢に向かい走り続けている。
【編集】山に囲まれどこか懐かしさ感じる豊根村。この地ならではのエゴマの料理法など、この地だから伝えられることにこれから注目です。
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